『中国の植物学者の娘たち』


「湖上に浮かぶ植物園、空にはばたく百八羽の鳩……、詩的な風景とともに紡がれる禁断の愛の物語」


そんなコピーに思いっきりつられて、12月15日から公開の映画『中国の植物学者の娘たち』の試写を観てきました。『小さな中国のお針子』のダイ・シージエ監督が、中国ではタブーとされている同性愛をテーマに取り上げた新作です。

             
◎あらすじ(公式サイトより抜粋)
両親を亡くし孤児院で育てられたミンは、植物学者チェン教授のもとに実習生として赴く機会を得る。彼の植物園は湖に浮かぶ小島で、舟から降り立つとミンの目の前には濃い緑が生い茂り、鳥の鳴き声が響き渡っていた。
到着するなり教授は、時間を守らないミンを怒ったが、娘のアンは同じ年頃のミンを温かく迎え入れる。落ち込んだ彼女を慰めるアンもまた、10才で母を亡くしてから、厳格な父と二人きりで孤独な暮らしを送ってきたのだ。
似たような境遇のミンとアンは次第に心を通わすようになり、ふたりの愛は深まっていく。しかし、二人を待ち受けていた現実とは……。
  


ダイ・シージエ監督は、チラシに「私が描いたのは、どこにでも、いつの時代にでもある愛の物語」というコメントを寄せています。二人がお互いを美しいと感じて惹かれあい、ぎこちなく心を通わせていく姿は、人里離れた植物園のむせかえるような緑につつまれて、エキゾチックで官能的。「私の貞操はあなたのものよ」なんて台詞にちょっとむずかゆくなっちゃたりもしますがw、満たされない境遇のなか、初めて愛し愛されることを知った二人の切実な想いが伝わってきます。


でもね、わかってたけど悲しくなっちゃうかな。ハッピーな物語しか見たくない人にはおすすめできません。


でもきっと、こんな現実もあるんだろうな。禁断と言われる恋の前で、世間がどれほど狭量で一方的か、常識や社会通念がどれほど粗野か、そのことがはっきりと浮き彫りになる。二人の選択もその結果も、切なすぎるし愚かすぎると思ったけれど、このくらいの結末じゃなきゃ問題提起はできないのでしょう。


ロケは中国では撮影許可を得られなくて、隣国のベトナムで行なったんですって(なにがそうも許せないんでしょうねぇ)。人間界でなにが起こっていても、植物たちは泰然としている。白く煙る霞の中から重く湿った木の葉の香りが伝わってくるような映像でした。


公式ブログ『中国の植物学者の娘たち』
http://www.astaire.co.jp/shokubutsu/