さるもの慧眼

たいてい私はさるもにいつも驚かされているのですが、またもや驚かされてしまいました。


先日、さるもが私に、あるお料理屋さんのランチをご馳走してくれました。ちょっと食べてみたいから付き合ってと言うのです。わーい♪って気軽についていきましたが、ランチ6000円と知ってギョッとしました。その店は小さいながらも定評があるらしく、私も雑誌で知ってはいましたが、そこに掲載されていた写真からはとてもそんな高級店と思えなかったからです。


店そのものは、雑誌の写真で見たとおり、まるでピンとくる雰囲気ではありませんでした。むしろセンスが悪いと感じたのが正直なところw ところが、出てくるお料理が一皿一皿、すごいんです。どこにどんなルートがあるのやら、ものっすごくいい食材を仕入れているのがわかるし、またその素材の持ち味を活かす繊細な味つけや調理の見切りがすごい。コースだったのですが、似たような味わいはひとつもなく、これもすごい、これもすごいんですけど……と思ってるうちにデザート。


「どう思う?」と訊かれて、私は「すごい、素晴らしい。ハッとさせられる感じ」と答えました。だけど、「器がちょっとねw」っても言った。だって、せっかくこんなにおいしいのにさあああ!っていうセンスなんだものw あと「接客に問題あるねぇ」とも言った。町の食堂ならいいけれど、この味のクオリティとは釣り合わない。つまり、こちらも「せっかくおいしいのにもったいない」って感じだったんです。


私は「調和」を好むところがあり、お店もどこかひとつが飛び抜けていいというよりも、総合的にまあるく満足度が高いほうに好感を持ちます。ラーメン屋なら、頑固オヤジが黙って食べろと怒鳴るような汚ったない店だけれども都内一おいしいという店より、味はもちろんおいしくなくちゃ困るけど、同時に明るく元気で清潔で、気の利いた曲がかかってる店のほうが好きだし居心地がいい。これは好みの問題で、どちらがいいというわけではないと思います。


そういう私の感覚からすると、この店は好みではなかった。だから、ご馳走してもらっておいてナンですけれども、また絶対来たいという感じではなかった。さるもも私と似た感想を持ったみたいでしたが、妙になにか納得したような顔をしている。彼女はどうやら今回は、「味そのもの」に着目してるようでした。そして、帰り際に料理長があいさつに出てきた時に、「こちらでお料理を習いたいんですけど」と言ったんです。


実は、さるもはお料理教室を探していたらしいのです。最近、都内では一流シェフによる料理教室がはやっていますが、さるももなにげに探していたんですねー。自分の感覚と私の反応から、ここは確かにおいしいと感じて即断したようでした。幸い、いまちょうど空きがあるということで通えることになったようでした。へー、お料理ほんとに習うんだ…とびっくりしたのですが、さらにびっくりしたのはここからです。


なんとその店、いま話題の『ミシュラン東京』で星を獲得していたんです! もちろん、そんなことさるもも私も知りませんでした。気になるから食べにいって、教室に通うと決めて、それから一週間も経たないうちにミシュランが発表になってリストに載ってた。それってものすごい慧眼と強運ですね。おそらく今から申し込んでも、もうパンクしてて無理でしょう。きっとさるもには、料理の神様がついてるんだと思います。


そうそう、この教室にはコパンダちゃんも通うらしいので、私はミシュラン掲載のシェフにお料理を習う友人がふたりもできたことになります。ふふふ、今後が楽しみw そういえば、さるもに誘われてすぐ「私も通う」と決めたコパちゃんのカンにもすごいものがあるわー。私は「習い事はキライ」なんて言って断ったのにねw あれこれ小賢しく、気難しく考える私のクセが、まったく愚かに思えた出来事でした。