セミナーよりも学んじゃったこと

今日は仕事で、とあるセミナーに参加しました。
自己啓発セミナーとかじゃないですよw 勉強会のようなものです)


会場に到着すると、入口のところに、セミナーで使うレジュメが積まれていました。
私はそれを一部もらって、空いていた席に座りました。


どんどん席が埋まってきて、私の隣にも人が座りました。
20代後半くらいの、なんとなく暗い印象の女性です。
重い前髪がボサッとメガネにかかっています。


知らない人なので、私は会釈だけしてレジュメをぱらぱらと眺めていました。
するとしばらくして、その彼女がいきなり私のレジュメを指差して、こう言ってきたのです。


「あのー、これ、私、ないんですけど」
「え?」


一瞬、何を言われたのかわからず、私は訊き返しました。
彼女は私のレジュメを指差したまま、また言いました。


「これ、私、ないんですけど」


ああ、どこでもらったのかってことね。
私はやっと意味を理解して、
「入口のところに置いてありますよ」と教えました。


「ああ…」


なるほどねという感じに彼女は低く呟くと、
面倒くさそうにのろのろと席を立ち、入口まで取りに行きました。
その後ろ姿を眺めながら私は、なんとなく不愉快な気持ちを感じていました。


「これ、ないんですけど」ってなによ。
自分が取り忘れてきたくせに。


彼女はレジュメをもらって戻ってくると、黙って席についてレジュメを見始めました。
私も黙ってレジュメに目を通していました。


セミナー開始ぎりぎりになった頃、おしゃれでかわいらしい雰囲気の女性が、
小走りに会場に駆け込んできました。
私の逆隣が空いているのを見つけて、急いで席に着きます。


彼女はすぐにみんなが目を通しているレジュメに気づいて、私にそっと訊いてきました。


「すみません、これって私が来る前に配布されたのですか?」
「いいえ、入口のところで各自でもらってくるんですよ」


あっ、そうなんだ。
彼女は小さくつぶやき、私に「(教えてくれて)ありがとうございます」と微笑みました。


それから小走りでレジュメをもらいに行き、
席に着く時、もう一度、私にちょこっと頭を下げて、


「すみません、お騒がせしました」


と、微笑みました。
私も笑って、講師の方がいらっしゃるまですこしおしゃべりをしました。


言葉ひとつ、表情ひとつで、まったく違う印象になるものですね。
後から来た女性はとてもスマートで好印象でしたが、
とくにすごいというわけではなくて、社会人ならごく自然な振る舞いだろうなと思います。


でも、世の中にはそんな当たり前ができなくて、すごく損する人がいるんだなあ。


不器用なのかしらね?


でも、ささいな言葉の選択や振る舞いが、自分の運命を決めていく。
自分の印象や、出会いや、チャンスをつくっていく。


そんなことを感じた出来事でした。