『儚い三日月〜あやごまバージョン〜』

奥さん! PCの整理してたら、死ぬほど昔に書いた「あやごま」が出てきたわ!
あたし、自分がこんなの書いてたの信じられない。
酔ってたせいもあるけど、自分で書いたくせに自分で泣いたわwww
(てゆうか、こういうの自分だけ?w)


飼育に投下すべきなのかもしれないけど、取り急ぎ、ここに投下するわ。
もしよかったら感想をきかせてくださるとうれしいです。


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『儚い三日月〜あやごまバージョン〜』


「あたし、女の子とこういうことしたのって初めて」


乱れたシーツのベッドの上で、あたしは自分自身に驚いてる。
あたしってこんなことできるんだなー、って。
できちゃうんだなー、って。


「へたっぴじゃなかった?」


そう言うとごっちんは、「ううん」と呟き、ふるふると首を振った。
大きな耳が、ありえないほど赤く染まっている。


ごっちんは、女の子としたことあるの?」


ぴくんと肩が震えて、
ごっちんはすこし、考え込むような顔をした。
言うべきか、言わざるべきか、そんな感じ。


「ふうん、あるんだ?」


紺ちゃんかな?
けっこう前だけど、軽く噂になってたのは知ってた。


モー娘。のなかのことはよくわからない。
誰が仲がいいとか悪いとか、興味もなかった。
ただ、 “仲が良すぎてアヤシイ”なんて噂が聞こえてくると、
そういうのもいいなあって、なんとなく羨ましく思った。


「じゃあ、いろいろ教えてよ、ごっちん


あたしはずっとひとりでやってきたから、
女の子に心惹かれても、べったり仲が良くなるってことなかった。
みきたんだって、娘。に入ってからは、
どんどんそっちに行っちゃって、寂しかった。


好きだったのに。


そうだね、みきたんにも、こういうふうにしたってよかったんだね、あたし。
あの頃はこんなこと、思いつきもしなかったけど。


艶やかなごっちんの髪をそっと撫でると、
心地よさそうにごっちんは目を閉じ、
甘えるようにあたしの腕におでこをこすりつけた。


子猫みたいな、かわいい仕草。
女の子ってかわいい。
ごっちんって、すごくかわいい。


かわいさのあまりほっぺに齧りつくと、
ごっちんはくすぐったそうに大笑いした。
それからアゴにキス、ほっぺにキス、
ちょっとじらして、やっと唇にキス。


ごっちん、かーわいい!」


ねぇ、あたし、誰かをこんなにかわいいって思ったの、初めてかもしれない。


あなたの過去に何があったっていいけど、
今、ここにいるこの瞬間からこれから先の未来には、
全部全部、私だけがあなたに足跡をつけていきたい。


てゆうか、あなたを私のものにする。
するの。決めたの。


「ね、ごっちん。うちら最低、週に2回は会うようにしよっか」
「え…?」
「だめ?」
「あ、ううん…、だめってことないけど」


だって、亜弥ちゃん、忙しいんじゃないの?


耳を赤く染めたまま、ごっちんはモゾモゾと呟く。
約束とか、どうなの? なんて。


「ばっかだなー。忙しいから決めとくんじゃん」


恋がどんなにうつろいやすいか、
愛がどんなに壊れやすいか、あたしは知ってる。
ごっちんだって、知らないわけじゃないでしょう?


「あたし、こうなったからには、ちゃんとやっていきたいんだよね」


なんとなくつきあって、
なんとなく離れてくみたいな、
そんなのはヤダ。ヤなのよ。


成り行きになんて、あたしは任せない。
任せたくないの。


「週2ねぇ…」
「週3でもいいよ。あ、なんなら一緒に暮らそうか?」


瞳を覗き込むあたしに、ごっちんは笑う。
なんていうか、困ったみたいに。


「……亜弥ちゃんってさ、いつもこんな感じなわけ?」
「なにが?」
「いや、なんていうかさ……」


ごっちんは首をかしげて、膝にちょこんと頭を乗せた。
目元がなんとなく笑ってるから、気分を損ねたとかではないらしい。
戸惑ってるのかな? まぁ、たぶんそんなとこ。


「じゃあ、ごっちんは、いつもそんな感じなわけ?」
「え…?」
「はっきりしない感じ。どうしたいのか、全然わかんない」


うーん……。
ごっちんは唸って、ますます首をかしげた。


「んー……、好きだよ? 好きだけどー」
「なにそれ、あたしの歌じゃん」
「ははは。正解」
「ごまかすな」
「ごまかしてないよ」
「ごまかしてる」
「ごまかしてないったら」


歌うようにやさしい声で、ごっちんははぐらかす。
ふっと眼をそらし、遠くを見る横顔。
ねぇ、なにを考えているの? 教えて。


ごっちん、こっち見て! ねー、こっち見てよぉ!」
「もー……」


亜弥ちゃんって、いつも、そんななの?
ごっちんが笑う。


そう、あたしはいつもこんなだよ。
欲しいものは、絶対に手に入れるの。
思い通りにするの、すべてを。


「ねぇ、ごっちん、あたし、これっきりなんて嫌だよ?」


恋人になろうよ、ちゃんと。
そういうとごっちんは、


「そんなこと初めて言われた」


と、笑った。


「はじめてぇ? どーゆー人生歩んでるのよ、ごっちんは」
「いや、フツー言わないって。……なんか暗黙の了解っていうかさ」
「あー、ダメ、あたしそういうの。はっきりしたいの」
「はっきりねぇ……」


ぱたりとまたあおむけに倒れ込んでごっちんは、
ゆっくりと、アゲハ蝶のように両手を広げた。
まあるい美しい胸が、月明かりにゆらりと揺れる。


きれい……。
ため息をついて見とれたあたしを、
ごっちんは、あのガラスのような瞳でまっすぐに見た。


「ねぇ、あたしのこと、どのくらい欲しい?」
「え?」
「今だけじゃないの?」


女の子がそんなふうに言うのは、たぶんよくあること。
チヤホヤされて、心を許したとたんに飽きられる空しさ。
わかるよ。


だけどはっきり言って、
そんな馬鹿とばかりつきあってきた
あんたが悪いよ、ごっちん


「あのね、一緒にしないでよ」
「…………」
「あたしは、特別だよ? わかるでしょう?」


誰よりも美しく、誰よりも意志が強い。
自分でそう自信があるから言うよ。
うぬぼれてるから言うよ。
あたしは、あなたを決して、裏切らない。


ごっちんは戸惑ったように唇を噛み、
そして窓の外に目をやった。
はるか遠くに見える細い三日月。


その瞳に、切ない涙が浮かんでるのをあたしは知ってる。
彼女の髪をすくいあげて、あたしはキスをする。
信じさせてあげる、いつか。


あたしの愛の姿を。


ごっちんはまだ振り返らない。それでいい。
怖がってていい、あたしのこと。
信じさせてあげる、いつか。


傷だらけの背中をあたしは抱きしめる。
この心が伝わるように。


あたしあなたを愛してる。愛し始めた。


そのこと、信じさせてあげる、ごっちん


そう、これが、あたしの愛。



☆終☆