いしよし小説「ルームナンバー1444」第三話

( さ。る)<くまちゃんが拗ねよるから、やさしい皆さんが一生懸命コメントつけてくださってるでないの。
(;く∀ま)<……はい、うれしいです。
( さ。る)<面倒な作者になってるんでないの?
(;く∀ま)<……はい、反省してます。


かまってほしがりですみませんw m(_ _)m
でも、うれしいものなんですよ〜、やっぱり。
ほんのひとことでも励まされるっていうか、張り合いがあるっていうか。。。


というわけで、コメント、ツイッター、またわざわざメールをくださった皆さま、大変ありがとうございました。


いろんなお気持ちを知ることができ、いまさらでも蔵出しをしてみてよかったな〜と感じています。
で、ごめん、今日はワケあって酔っ払っててお返事できないの。
明日、頑張るから許して。


では、第三話にまいります。


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「これに、乗るの?」


友達に借りてきたバイクを見て、彼女、石川梨華さんは戸惑ったような笑顔を見せた。


「私、バイクの後ろって乗ったことないんだけど…」
「へーき、へーき!」
「ちょっと怖いなぁ…」
「へーき、へーき!」


そぉ…?
おそるおそるシートにまたがる彼女を乗せて走り出す、台風一過の青空の中。
長い髪を風に巻き上げられながら、彼女はひしとあたしの背中にしがみついてきた。


「ねぇー! なんて呼んだらいいー?」
「えー? なにがー?」
「あなたの名前ー!」
「あー……、よっすぃ〜って言われてるけどー?」
「わかったー! よっすぃ〜ねー!」


彼女はとても食いしん坊で、行きたいお店がたくさんあった。
どこにそんなに入るわけ?ってくらい、たくさん食べた。


「おいしー! ちょっとこれ最高じゃない!?」


そのくだけた様子が、あたしを有頂天にさせた。
生まれ育った土地の味を、彼女が喜んでくれるのがうれしかった。
もっともっと楽しんでほしい。笑ってほしい。
あたしはもうあっちもこっちも連れて行った。


「ここ、あたしの小学校!」
「名所なの?w」
「え、や、違うけど…」


ごめん、なんか見せたかった。
照れて頭を掻くと、彼女もおかしそうに笑った。


石川サンは順応性が高いようで、怖がってたバイクにすぐ慣れた。
むしろ、スピードを上げれば上げるほどはしゃいで大笑いしてるから、
おいおい落ちんなよ〜!って心配になるくらい。


よっすぃ〜、楽しいね!」
「そぉ?」
「うん、チョー楽しい! もっと飛ばして!」
「やー、捕まるってマジで(汗」


さんざん観光してまわって、最後にあたしが連れて行ったのは、
彼女が昨日、行きたがってた岬。
今日も最初に行きたがった彼女に、あたしは言ったんだ。
あそこは、夕暮れ時じゃなきゃ意味がない。


「ほんとだー……」


オレンジに染まる海を見て、彼女はたちまち目を潤ませた。
さっきまではしゃいでたのが嘘のように、
おしゃべりな唇が、凪のように黙り込む。
美しい景色に心が震えてるのがわかった。
見た目よりずっと感激屋で泣き虫なのだと、よくわかった。


膝を抱えて座り込み、いつまでも動こうとしない彼女にあたしは訊いた。
ずっと不思議に思ってたことを。


「なんで、ひとりで来たの?」


一日、一緒にいて、あたしはますます不思議に思っていた。
花のように笑うこの人に、一人旅は似合わない。
友達とはしゃぎながらか、それか恋人と。
そのほうがずっと自然な気がした。


彼女は、しばらく答えなかった。
目を潤ませたまま、ただぼんやりと夕陽が沈むのを見ていた。
あれ、まずいこと聞いちゃったかな?
あたしも気まずく黙り込む。
もしかして失恋旅行とか? そうかもね……。


かなりかなり長い沈黙が続いた後、
フッとため息をついて、彼女が呟いた。


「私ねぇ、結婚するの」


え………?


「親が、決めたの」


肩をすくめる。
どうにもならないことを、もう考えないというように。
あたしは混乱していた。
そんな、いまどき親が決めるなんてあるの……?


「すごく…、すごく好きな人がいたんだけどね、別れさせられちゃった」


悲しげに目を伏せる横顔。
どうして?と尋ねると、彼女は不思議な感じでフフッと笑った。


よっすぃ〜には、話しちゃおっかなぁ」


膝を抱えて、いたずらっぽくこっちを見る。
夕陽を吸い込んだみたいな煌めく瞳で。


「恋人ね、女の子だったの」


ギクッとした。
まさかこの人がそんなことを言い出すなんて。
動揺するあたしに、彼女がほほえむ。


「私ね、女の子が好きなの」


……気づかなかった。
そして、どうしてそれを、あたしに……。
その答えを、彼女はとてもシンプルに語った。


「あなたも、そうでしょ?」


あたしは息をのむ。
なぜ、この人はあたしの秘密を。


「……どうして?」
「え、だって、わかるよ」


彼女が、くすくすと笑った。
それから風に舞う髪をおさえながら、すいっとあたしを見た。
すこし意地悪な、誘うような瞳で。


「だって、そういう目で、私のこと見てるじゃない?」


=続く=
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また明日更新しまーす。
またちょっと遅くなるかも。ごめんね。