あやごま小説『ふたりは最強』(前編)

なんか寂しいな。お祭りのあとみたいだ。


すごくすごく緊張して打ち明けて、あったかい言葉をもらってわぁってうれしくなって、どこかで悪く言われてるかもしれないけどそれは仕方ないし、でもそれよりもうれしかったし、打ち明けてよかったって思ったし。


って思いながらお酒飲んでたら、すごく寂しくなってきた。


なんでだろう、真っ暗な山の中でぱちぱちと燃えるオレンジ色の焚き火を、
ひとりでじっと見てるような気分だ。


なんでだろう、寂しい……。


あんまり寂しいから、蔵出しあやごま小説を投下するっ(何。
もう、ほこりが降り積もってるくらい、昔のだけどね。


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あやごま小説『ふたりは最強』(前編)


ごっちーん♪って飛びつくと、
ごっちんはいつもビクッってなって、ぎこちなく笑った。


ほっぺにチュッってすると、びっくりしたように首をすくめた。


でも最近は慣れてきて、
時々、口にチュッてしちゃっても
照れたように笑うだけだったんだ。


それがあたし流のあいさつなんだって、
ごっちんは思ってたかもしれない。


うしろからぴょんと抱きついたりすることも、
膝の上にエイエイ乗っかっちゃったりすることも、
ツアー先から欠かさず名産品を送ることも、
楽屋でひとりボーッとしてるあなたに話しかけることも、
あたしから手を繋いでステージを歩くことも、


ぜんぶぜーんぶ、あたし流の友達づきあいなんだって
あなたは思っていたかもしれない。


だけど、違うんだなあ〜〜〜〜。


「えーと、な、何……?」


あえなくベッドに押し倒された格好で、
ごっちんは大きな目を、さらに真ん丸にして見上げてきた。
めちゃくちゃ慌てたみたいに、でもやけに冷静を装って。


「何って?」


あたしはニッコリ。
まさか初めてだとか言わないでしょ?


「や、そういうことじゃなく」
「なあに?」
「え、や、ちょっとこーゆーのは」
「どうしてぇ?」


あたしの部屋を見てみたいって、あなたが言ったんじゃん。
泊まってく?って誘ったら、ウンって言ったじゃん。


「そ、そーゆうつもりじゃなくて」
「えー、あたしはそーゆーつもりだけどぉ?」
「ちょ、ちょっと待ってよ、まっつ〜〜〜」
ごっちん、あたしのこと嫌い?」
「……嫌い、ではない、けど」
「じゃあ、好き?」


そんな。
呻くように呟いて、真っ赤に染まった大きな耳。
いつになく慌てふためく横顔に、絹糸のような髪がかかる。


ああ、あたしはごっちんのこと大好き。
だって、すごくきれいなんだもん。
機械仕掛けのお人形みたいなんだもん。


「もしかしてごっちん、困ってる?」
「困るよ!困んない人いないでしょ、これ!」
「だーいじょうぶ。ほんとに好きなんだってば」
「いや、ホントとか嘘とかじゃなくて!」
「じゃあキスはぁ? キスはいいの? 逃げないじゃんいつも」
「え、そ、それはぁ〜」


友達のぉ、キスかと……。
口の中で彼女はゴニョゴニョ言う。


無視してこめかみにキスをしたら、ビクッと目を閉じた。
左胸にそっと手をあてたら、心配なくらいドキドキしてて。


ごっちん、すごいドキドキしてる」
「だ、だからそれはぁ!」


あたしの肩で抵抗してる指先に力がこもる。
迷ってる? 困ってる? 怒ってる?
ねぇ、でもごっちん、あたしはね。


「もう、ガマンできない」


特別になろうよ。
あなたもきっとあたしを好きになる。
なーんて自惚れは、あたしの専売特許。


だけど、いつだってあたしは自惚れを自惚れじゃなくしてきた。
笑って全部、クリアしてきた。
ごっちん、あなただってそうでしょ?


「……亜弥ちゃんほどじゃない」
ごっちんらしくないなぁ」
「どいてよ、お願いだから……」


懇願は、あなたらしくないな。
ほんとにイヤならその長い脚で蹴って逃げてよ、あたしから。


「そんなことできない、から」


 お願いしてるんじゃん……。


あたしの腕の中でごっちんは、拗ねたように目を伏せた。
戸惑いが鼓動になり、驚きが迷いに変わる。
その狭間を突いて、強引に寄せた唇。
あなたをあたしは逃がさない。
こんなあたしは、キライですか?


「……ち、ちがくて…」
「なによ?」
「……あ、あ、あのね、下着がっ…」
「へ?」


きょ、今日、そういう下着じゃなくぅー。
真っ赤になってごっちんは、だからやめて、なんていう。
いいじゃん、そんなの。女同士なんだから。


「シャワー!」
「気にしないってば」
「で、電気!!」
「いいじゃん、間接照明なんだし」
「イヤだあーーーー!!!」


ジタバタ暴れるから、しょうがないなあって、
あたしはベッドサイドの照明をパチンと消した。


一瞬、シンとなる真夜中の空間。


カーテンから透けてくる満月のあかりに
あたしたちの影が寄り添ってのびて、
あたしを見上げるごっちんの情けない表情が浮かび上がった。


「ねぇ、やっぱこんなのよくないよ……」
「どうして?」
「だってなんか……」


恐がりのごっちん
愛おしくて、強く強く抱きしめた。
大丈夫だよあたしたち、これからいいほうに変わる。


首筋をぺろんと舐めたら、びくんと息をのむ気配。
そっと耳たぶを噛んで囁きかけるのは、あたし流の愛の言葉。


「我慢して。あたし、どうしてもごっちんが欲しいの」


大きな耳をぱくっと食べると、
ごっちんは“あ行”で小さく呻いて、
たちまちギュウッとしがみついてきた。



(後編に続く)
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あはは、懐かしい。だらだら書いてるなあ。
我ながらだらだらしてると思って、お蔵に放り込んだのでしょう。


そういうの取り出してきて、フッてほこりをはらって、
「見て見て」って言ってみているわたくしでした。


子どもっぽいね。寝て起きたらギャー!とか叫びそうw


でも、続きは明日、更新しますね^^
ありがとう、いろいろ。

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