いしよし小説『マンネリLOVERS』

娘。小説をアップするとアクセス数がぐんと伸び、
しゅるしゅるとまた元に戻っていく件w


そりゃそうか。
もともと「雪ぐま」は、娘。小説作者だものね。


それはさておき、それなりにご好評いただけたようですので、
蔵出し第2弾、行きまーす。


次は、いしよしです。
これまたけっこう昔に書いたものですが…。
軽めの話ですね。お楽しみいただけると幸いです。


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『マンネリLOVERS』


退屈な午後。
やるべきことがなくはないけど、
なんとなく気が向かない午後。


私はしばし携帯をスクロールして、
それからベッドに放り投げた。あーあ。


「……たまのオフなのにな」


恋人がいない時間をもてあますというのは、
ヒジョーに自主性に欠ける気がする。
そうだ、柴ちゃんにメールしよう!


「……返ってこないな」


仲良しが一人しかいないというのは、
ビミョーに人間的魅力に欠けているような。むむむ。


あ、そうだ。ののがいるじゃん。
でもなぁ……。


「子守りになっちゃうもんねぇ」


てか、いまや、ののが子守りしてるのか。
あの子がママねぇ。
世の中どーなってんのかしらね、まったく。


ああ。
ブラインドの隙間から漏れてくる光が真っ白で、
ほら、おでかけ日和だよって私のことを誘ってる。
だけど、出かける口実もなく、私はベッドの上でうだうだと。


「あーーーーーーー、退屈っ!!!」


ステージの上は華やかで、
みんなが私の登場を待ってる気がするんだ。
スタジオに行けばスタッフの皆さんが
石川さんおはよう、今日もよろしくねってチヤホヤしてくれる。


だけどオフの日の私はこんなに地味で、
ひとりで街に出かける勇気もなく、
なにか没頭できるような趣味もなく、
退屈な時間を、ただもてあましてる……。


「でもそんなの関係ねぇー!」


って、いいんだ、べつに。フン。
ごそごそと私はベッドにもぐりこんで枕を抱きかかえた。


いいもんべつに、お昼寝とかしちゃうんだから。
それはそれで贅沢な午後だもんね……。


  ◇  ◇  ◇ ◇ ◇


♪ ♪  ♪  ♪ ♪ 


どのくらい眠ってたのかな。
携帯が鳴って、私はねぼけまなこでヨロヨロと手を伸ばした。
眠い…、眠いが、この着信音は、よっちゃん。
これゎ、このお電話だけゎ出なければ……


「…………はぁー…い…」
『なんだ、ずっと家にいたのかよ』


朝から晩までお仕事だった恋人の呆れた声。
ずっと寝てたんかよ、だって。
いーでしょ、べつにぃー。


『アンタ、なんかやることないわけ?』
「うっるさいなぁ。今日は寝るって決めてたのよぉー」
「嘘つけよw まー、いいわ」


大好きなアルトが、ふっとやさしく緩んだ。
甘いほほえみが見えるようなトーンで。


『じゃ、これから出てきなよ。映画でも観よ』


ガバ。
私は飛び起きた。
たまらなくうれしい気持ちがむあ〜っと胸にわいてくる。
むあ〜っと。むあ〜っと。むあむあ〜っと。


でも、私ってやっぱ、超あまのじゃくかも。
指先で髪をくねくねいじって、なんかぐずぐず言ってるの。


「えー、髪ボサボサだよぉ〜」
『んだよ、風呂も入ってねーのかよ』
「入ったよぉー。入ったけど寝ちゃったのよー」
『いーよ、どうせ帽子かぶるでしょ?』
「でもでも映画館入ったら、帽子とらなきゃダメじゃない?」
『ニット帽にすれば?』
「えー、似合わないじゃんワタシ!」
『………来るの?来ないの?』
「行く!行きます!」


バタバタと決まった夜のデート。
いつもの映画館の指定席。
それからきっといつものカフェ。
いいかげんマンネリ。
だけどなぜだか嬉しくて。


『あんま待たせんなよー』


ハイ!
なんてお返事も元気に。
私はあれこれ悩んでやっぱり黄色いキャップを選び、
足が長く見えると褒められたキツキツのジーンズを苦心してはいて、
スニーカーをはきかけて、やっぱりブーツにしたりとかして。


「たいへん! もう30分も経ってる!」


お行儀が悪いけど、
タクシーのなかで口紅だけを、そっと塗った。
運転手さんがバックミラー越しに愛想よく笑う。


「これからデート?」


私は顔を上げて、反射的に笑った。
アイドルとしての模範解答が、すらすらと口を突いて出た。


「いいえ、お友達と映画です☆」


きっと嘘だと誰にもバレない。
こんな時、女の子の恋人って便利だな。


なんてね♪


☆おしまい☆


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「そんなの関係ねぇー!」に時代を感じるわw
梨華ちゃん、よく言ってたよね(^-^)